ランサムウェア週次動向 — 週内283件、thegentlemenが首位に浮上
今週(8/30〜9/5)、ダークウェブのランサムウェアリークサイトで新たに掲載が確認できた組織は283件(複数ソース間の重複を除去後)。
今週の全体像
週内トップは thegentlemen(26件、9.2%)で、qilin(20件、7.1%)、orova(19件、6.7%)、settra(17件、6.0%)、zawoo(16件、5.7%)と続いた。qilinは前週(8/23〜8/29)15.1%・前々週23%から今週7.1%まで3週連続で低下しており、単独首位を保っていた時期に比べ突出度が明確に弱まっている。代わってthegentlemenが前週の8.9%(2位)から今週9.2%(1位)へと順位を上げた形で、特定グループの入れ替わりが起きている週と言える。thegentlemenの被害組織はメキシコ・ブラジル・英国・タイ・台湾・アルゼンチン・インドなど地域・業種とも分散しており、特定のターゲティング傾向は見られない。セクター別ではManufacturing(26件、9.2%)・Professional Services(23件、8.1%)・Technology / Healthcare(各20件、7.1%)が上位(Other=25件・8.8%は分類不能な記載の受け皿であり実質的な業種傾向としては読めない)。
ただし、これらの集計には限界がある。国・セクター情報が「Unknown」のリークがそれぞれ29.0%・26.9%あり、全体の4分の1強が属性不明のまま集計されている。国別で判明している範囲ではUS(25.1%)が引き続き最多だが、これは観測対象リークサイト・アカウント側の報告バイアス(米企業の被害が報告されやすい)を反映している可能性があり、実際の被害国分布と一致するとは限らない。
ドイツの中小企業に集中する新興グループ「ZaWoo」
本データセットで2026-08-29に初めて観測された新興グループ ZaWoo は、今週16件を確認。うち10件(過半数)にドイツのタグが付いており、外部セキュリティベンダーの報道(SOCRadar、DeXpose、WatchGuard)でも同時期のドイツ企業への攻撃が独立に確認できたのは montronix(製造業)・Vectorsoft AG(ソフトウェア開発)・FES(独スポーツ用品研究開発機関)の3社。他の被害組織名はリークサイト上の主張のみで外部の独立報道は確認できていないため、本記事では実名を伏せる。外部報道によれば同グループは二重恐喝(データ窃取+暗号化)型で、ビットコイン建てで身代金を要求する手口とされる。ZaWooは2026年8月に活動を開始したばかりの新設グループで、外部ベンダーが把握する総被害件数(十数件規模)も今週分とほぼ一致しており、実質的にこれが同グループの活動履歴のほぼ全てにあたるとみられる。
日本企業について
今週、RansomHouseのリークサイトに REXT Holdings 関連のエントリ掲載を確認した。実際に不正アクセスを受け対外公表したのは事業会社のREXT株式会社(WonderGOO・WonderREX・新星堂・HAPiNS等を展開、持株会社がREXT Holdings)で、2026年8月9日に一部社内システムへの不正アクセスを確認したとして8月10日に公表、8月17日時点の同社発表では一部店舗の休業・キャッシュレス決済制限・買取サービス停止などの影響が続いていた。RansomHouseの関与自体は同社から公式確認されておらず、リークサイトへの掲載=攻撃者側の一方的な主張が今週になって現れた、という位置づけになる。
なお、集計対象にはcountry属性が「JP」と記録されたリークがもう1件あったが、内容を確認したところ実際には米国の学校法人に関するものであり日本企業ではなかった。属性情報(国・セクター)には一定の誤り・欠落があることを申し添えておく。
データソースについて
集計はransomwatch・ransomware.live・ransomlook・X上のランサムウェアリークアカウント群(ThreatMon Threat Intelligence Team経由の投稿)を突き合わせたもの。今回、X経由取得分のうち、他の脅威アクター名や過去(2019〜2024年)の著名事件の列挙、ハクティビスト系の侵入声明など、ランサムウェア被害の新規告知に該当しない投稿が計39件混入していたため除外した(パース失敗によるゴミデータ1件も別途除外)。ここに掲載された情報は、いずれも攻撃者側リークサイトに既に公開されている情報であり、この記事はその周知・注意喚起を目的としている。実際の侵害範囲・影響については、各社の公式発表を確認されたい。