ランサムウェア週次動向 — 週内305件、医療系プラットフォームを狙い撃つ新興グループ
今週(8/23〜8/29)、ダークウェブのランサムウェアリークサイトで新たに確認できた被害者は305件(重複除去後、複数ソースでの重複検知を除く)。日本企業の新規被害は今回確認できなかった。
今週の全体像
週内で最も活発だったのは qilin(46件、全体の15.1%)で、2位の thegentlemen(27件、8.9%)、3位の akira(19件、6.2%)と続いた。前週(8/16〜8/22)は qilin が23%を占めていたのに対し、今週は15.1%に低下しており、突出度はやや弱まっている。セクター別では Manufacturing(37件、12.1%)・Healthcare(34件、11.1%)・Professional Services(30件、9.8%)が上位。
ただし、これらの集計には限界がある。国・セクター情報が「Unknown」のリークがそれぞれ25.2%・23.6%あり、全体の4分の1が属性不明のまま集計されている。国別で判明している範囲では US(24.6%)が突出しているが、これは観測しているリークサイト・アカウント側の報告バイアス(米企業の被害が報告されやすい)を反映している可能性があり、実際の被害国分布と一致するとは限らない。
医療系プラットフォームを狙い撃つ新興グループ「kazu」
今週リークサイトへの掲載が確認できた10件のうち9件が、患者管理・遠隔診療・獣医療・予約管理などヘルスケア関連のSaaS/プラットフォームだった。対象は米国・アルゼンチン・ブラジル・カナダ・パキスタン・メキシコと6カ国にまたがっており、特定地域ではなく「医療系プラットフォームというカテゴリ」そのものを横断的に狙っている構図が見える。
- PappyJoe(Healthcare Management System、米国)
- Brazil Mobilemed(Cloud PACSプラットフォーム、ブラジル)
- Canada Yocale(予約管理システム、カナダ)
- PawlyClinic(デジタル獣医療プラットフォーム、米国)
- Meducar / ConsultorioMovil(遠隔診療・患者管理、ブラジル/メキシコ)
- Instituto Ferrero de Neurología y Sueño(神経・睡眠専門クリニック、アルゼンチン)
- Dr Akbar Niazi Teaching Hospital(教育病院、パキスタン)
- Centro Médico Especializado OSI(医療ソリューション、メキシコ)
医療機関そのものよりも、複数の医療機関が使う基盤システム(PACS・予約管理・遠隔診療プラットフォーム)を狙う形になっており、1件の侵害で複数の医療機関の患者データに波及しうる点が構造上のリスクとして目立つ。kazuは今週初めて本データセットで観測されたグループ名で、活動実績・手口の詳細はまだ乏しい。
日本企業について
今週、country情報が判明している被害者の中に日本企業は確認できなかった。ただし国・セクター情報が「Unknown」の被害者が77件(25.2%)あり、この中に日本企業が含まれている可能性は排除できない。前週(8/16〜8/22)確認できた3社(Akatake Engineering・Apollo Office System・ASCII Group)のような動きが今週は観測されなかった、という点にとどめておく。
データソースについて
集計は ransomwatch(ransomware.live)・X 上のランサムウェアリークアカウント群(ThreatMon Threat Intelligence Team 経由の投稿)を突き合わせたもの。ここに掲載された情報は、いずれも攻撃者側リークサイトに既に公開されている情報であり、この記事はその周知・注意喚起を目的としている。実際の侵害範囲・影響については、各社の公式発表を確認されたい。